異世界パラレル02

続けます

2005/01/12



==エド、叛乱軍に参上


戦の大勢は決しつつあった。炎とともに襲い掛かる軍は勢いを増し、対するもう片方は既に腰が引けている。形ばかり整った部隊はその形が崩れると脆い。側面を突かれて北方が総崩れとなった後は、もはやどうあがいても正規軍の敗北は覆らなかった。
「――つまらないって顔だね、兄さん」
「ッ…そんなことねーよ!」
かっと染まった表情を隠すように少年はいささか乱暴な口をきく。
「今日も勝っちゃったね」
「俺だって弱いヤツに味方するつもりねーし」
「…負けてほしいくせに」
それで乱入してぱーっと助けてかっこいいとこ見せようとか思ってるくせに。
「そ…!」
否定しかけて少年は頭を振った。どうせ全てお見通しなのだ、聡い弟は。
だが、その弟は一体どこにいるのだろう?
戦場を見下ろす崖の上には、黒馬に跨る少年がいるだけ。
それなのに、彼の言葉に幼い声が返事をする。
「あーもうなんか別の手考えっかなァ…」
「兄さん、またどうせ変なコトを」
「いーから、行くぜ!つかまってろよ、アル!」
「んもう、兄さんってばー!」


その後、エドは平兵士として叛乱軍へ志願。
目立ちすぎる髪と目を隠すために、鈎黄(コウキ)族の扮装。
顔の上半分を覆うゴーグルと、大きな帽子、ずるずるとした服。
それは好都合なことに機械鎧も隠した。
(鈎黄族:金の系譜に連なる一族。特に機械製造を業とし、洞穴窟で生活・作業をするために太陽の光に弱い。ゆえに外界に出るときは上記のような格好をする。)
鈎黄族のフリをしていたために、整備部に引っ張られる。偏った知識をフュリーに不審がられるが、フュリーはイイ人なのでエドの嘘を咎めるようなことはしなかった。結局機械整備もろくにできないエドは(その背の低さを買われて)ファルマンの偵察部隊へ。しかし偵察に出ると敵の伏兵と遭遇してしまい、全撃破。結果として戦果は上げているものの、偵察としての役割を果たしていない(上にトラブルメイカー)ということで、偵察部隊からも放り出される。実はそれも全て欠落の王の宿命で、彼には様々な試練がつきまとうのだった。

今度はハボックに拾われ、切り込み部隊に。内心大喜びなエド。なぜならば、戦闘時ロイはたいてい切り込み部隊のすぐ後ろにいて、部隊を援護しているから。
かっこいいところを見せるチャンスだと意気込むエドだが、なぜかおいしいところは全てハボとリザに奪われ、いまいち活躍できない。
何なんだよーもう!と軍隊生活も一ヶ月になったところで、エド爆発。
「こんなじゃつまらーん」「ちょ、ちょっと兄さーん」と飛び出したところ、そこはそれ欠落の王の宿命として偶然ロイに遭遇。


うわ、と思ったときには踏みしだいた葉の音に男が振り返る。
月明かりの降りそそぐ水辺にそっと手を浸したそのままで首を巡らせた彼は、隠れる場所もなかったエドをさし招く。
仕方なく近寄ったエドの荷を見て、ロイは形良い眉を上げた。
「何だ、出ていくつもりか」
「思ってたより面白くなかった」
憮然としてそう言えば、司令官は少し笑った。
「面白いと思って叛乱軍に志願したのか」
「そうじゃないけど。…何、引き止めるつもり」
「いや」
わずかな期待も即座の返答にへこまされる。
「これは正規軍ではない。軍規も何もないだろう。勝手にしろ」
そう言ってもう興味は失せたという風に、また水に目を落とす。

「…祇の魂鎮めか」
興味を引かれて呟いた言葉に、ロイが顔を上げる。
「知っているのか」
「知らないけど、そういうのが必要だろうとは思ってたよ。あんたの火の使い方は無茶苦茶すぎる。冷まさないと、魂が燃え尽きる」
それが理だろう。
ロイはこともなげに言い放つ少年を不思議な気分で見やった。
「…鈎黄は月夜にもゴーグルを必要とするのか」
ぽたぽたと水の滴る手を伸ばされ、エドはさっと逃げる。喋りすぎた、と思った。
身構えて、そこではたりと気づく。
「おい」
「最後に少し働いていかないかね」
低い声の呼びかけに、ロイはどこか浮世離れした笑みを浮かべた。
「ハボックとかリザさんは」
「これのときはいつも一人だ」
「…バッカじゃねーの?」
心底そう思った。

…囲まれている。

「巌冥鳥に石祇獣、恨叉児」
数え上げた少年にロイは胡乱な眼差しを向ける。
「わかるのか」
「負の五精が渦巻いてるからな。さて、あんたは火を使うなよ」
「…任せていいのか」
「どっちにしろ鎮まってる今のあんたの焔であいつらは燃やせないだろ。それにあんたはいいかもしれないけど俺は森の中で火に巻かれたくない」
「嫌なら私に火を使わせるな」
「へいへい」


結局ロイを助けて、しかも叛乱軍を抜けられなかったエド。


「まだつまらないと思うか?」
「あんたみたいな厄介なのの側にいたら、そんなこと考えてる暇ねーよ…」
疲れきったエドは座り込む。
「なら、私の側にいろ。退屈はすまい」
え、と顔を上げるとふんと笑って去っていくロイ。ゴーグルの下の顔が熱くなる。
「っクソ……何回惚れ直させれば気が済むんだよ…」
「兄さん、それすっごく恥ずかしいセリフだよ」
「言うな!俺も恥ずかしいんだから」


その後、まーそろそろエドの正体に気がついていたロイの手により、エドは鈎黄の衣装を脱ぐ。戦場で、ひそかにロイがお膳立てしたとも知らずに、ロイのピンチを救出。
ついでに錬金術も披露。


地に叩きつけられたリーダーの姿に誰もが息を飲んだ。
地面に伏せて動かない彼に間髪をいれず無数の巌冥鳥が襲い掛かる。リザもハボックもあまりに遠い。戦場の混乱でうっかり離れた己の不明に歯噛みしながら、それでも伸ばした彼らの拳銃はうまく目標を定められない。
「そうはいくかよ」
するりとその間に割り込む影。
ぱんと両手を打ち合わせる。青い散光をだんと地面に押し当てた。
地面をうねるエネルギーを誰もが感じた。地中で何かが身動きしたような。
それは少年の下に集中し、そして爆発する。
爆ぜた地面から鋼鉄の弾が弾き飛ばされ、それは全て確実に巌冥鳥を捉える。
ついで打ち合わせた手はまた地面から槍を引きだす。
大きく巻き起こった風にあおられて、少年の服が翻る。かすめた弾がゴーグルの端を砕いていた。重い 鈎黄のゴーグルが自重で地に落ちる。それとともに頭に巻いた布が空へ舞い上がる。

黄金。
皆が瞠目した。
燃え上がる黄金の輝き。
渦を巻いて空を圧する金のきらめき。

「…やはり鈎黄ではなかったな?」
低い声がその背後に立つ。
何のダメージもなさそうに立つその姿を見て、エドは一瞬何か言いたげにする。
「俺はー」
「エドワード・エルリック。お前を利用する」
耳元で囁かれて、エドは何を…と言いかけて口をつぐまされる。
「諸君!」
「今、我らが救世主が現れた。欠落の王に、忠誠を!」
ロイが、膝を折った。エドの前に頭を垂れ、膝をつく。
ざっと全軍がそれにならった。
彼方まで四方に立つ者は己一人。
「王よ…」
風がざわめきとなる。
「王だと…?」
エドは呟いた。



彼の中身がかつて出会った少年であることも、気づいていたロイ。
まだロイが気づいていたことに気づいていないエド。


うわ…まだ続けるかもしれぬ…(笑)。
こんな捏造エドロイならいくらでも書けるのに。
結局のところ、互いに片思いしてるんだろうなー…私のエドロイは。
その思い方が二人は互いに違う。ずれている。だから埋まらない。
両思いのはずなのに、なぜか距離を置かざるをえない。
会いたいと思っているのに、会えば何か噛み合わない。

あ、まだアルの秘密が明かされていない!(笑)
そうですね。今回のアルは小動物系で。キツネリスです。うん(かなり適当だろ…)。




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