HARD WORK

2004/02/05



何故――こんなことに。
「は、鋼の」
目を覚ますとなぜかエドの膝枕でソファに横たわっていた。頭上では仏頂面の少年が、本のページを繰る。
「何」
「……いかがなものかと思うのだが」
「何が」
エドは無表情でページを繰った。
「いや…何がもなにも…起きていいかね」
「ダメ」
む。きっぱりと言われてしまい、ロイは黙った。口だけでは心配だと思ったのか、右手が頭の上に置かれる。
「…仕事をしないと」
「しなくていい」
ぱらり。
眼球だけが文字を追って左右に動く。本を支える左手だけで器用にページをめくる。
黄金の輝きを見つめて、ロイは眩しげに目を細める。
もしかして幸せ、かも。


思考がとろけかけて――はっと気づく。
――仕事をしなくていい…?
いくら目の前の少年が直接的な部下でないにしろ、有能な副官の薫陶を受けた彼がそんな言葉を吐くはずもなく。
「鋼の?」
「――あのさァ、大佐」
おそるおそるかけた言葉に帰ってきたのは、抑えた口調の―。


「変な無理してどうすんの」
「もしかして…怒っているのか?」
ため息をついた少年は、手に持っていた分厚い本を投げ捨てた。
「頭もどうかしてるっぽいな。そこまで死に掛けてたのかよ」


大佐はね!
俺がここ来て「よォ!大佐。元気してた」って言った途端に、俺に向かって倒れてきて、そのまま失神したんだよ!
俺が怒んないわけないだろっ!


「聞けば、ここしばらく不眠不休でそうとうきついスケジュールだったらしいし?」
――それに、デートだけはちゃんと休まずに行ってたらしいし?
事実なので、口元を引きつらせ、目をそらすしかない。
「とりあえず、中尉に休憩貰った。あと20分しかないけどな」
信じらんない奴…とぶつぶつ言う彼に思わず手を伸ばす。
「おとなしく寝てろって」
「せっかく君がいるのに?」


そんなもったいないこと、できないよ、私には。




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