世界の車窓から

2005/12/17

がたんがたんと揺れる振動がここちよい。
2人は無言で鉄の振動に身を委ねていた。
たまたま。たまたま乗り合わせたのだと後から乗り込んできた男はにっこりと言った。
「奇遇だねえ」
いつもと違い私服で、さらに下士官の一人もつれず。


ただ2人で列車に揺られている。



どういう状況なんだ、これは。
エドの頭を巡るのはそのただ一言だった。
わけわかんねーぞ、おい。
あ、ぼくちょっとお茶買ってきますね、と席を外したアルはなかなか戻ってこない。
というより、戻ってくる気がないに違いない。
明らかに遅すぎる。この列車の中を余裕で4往復できそうなくらい時間が経っている。
いいさ、そっちがその気なら…。
エドに具体的なアイディアは何一つなかった。


とにかくこいつが悪いんだ。隣…隣に座って!それ近いし!
先ほどからエドは身じろぎ一つできていなかった。彼が隣に座ってから、それこそ右手のみならず全身鉄に覆われたかのように身動きせず。


不意に左手に手が重ねられた。
ぱたりと。
そろ、とエドは首を動かした。
隣に座る男の顔を見ようとする。
男は顔を背けていた。窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めているようで。


エドは笑い出しそうになった。

真っ赤になっているのは耳だけではない。
ガラスに映った顔全部。




エドはその耳元に囁きかける。
「なあ、次の駅で降りようぜ」






…なんだろう。エドとロイがどこまで進んでいるのか全然わからないよ!
当初のタイトルは「東京傷年」
…どこにつながりが!




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