鉄の恋路

2006/01/30

春の緑の野を一本の線路がくっきりと二つに分断している。眼下に見下ろす峡谷には立派な鉄橋。
折しも、地を揺るがす轟音と黒煙がその存在を示して橋の上を走り抜けていった。
その一瞬になぜか、彼のことを考えた。
彼はあの汽車に乗っているだろうか。
乗っているかもしれない。

男はぱっと振り返った。待たせておいた運転手が後部座席のドアを開けようとする。
「いや、私が運転する」
車は負けじと煙を吐き出し走り出した。後には放り出された運転手が一人。




フェンスに激突する一歩手前で、エンストするように停車した車はそのままキーもつけたまま乗り捨てられる。軽々と改札を乗り越えた彼に、駅員が怖い顔で近寄ろうとするのに軍令部のマスタングだと短く告げる。それだけで駅員の足が止まる。
ホームへと駆け上がる足には羽根でも生えているようだ。
ホームには車両が並び、男はその横を駆けるようにして窓を覗き込みながら最後部を目指す。

きゅるるるる…と発車を示す音が鳴る。ドアがゆっくりと閉まり、車掌が笛を吹く。男は走る。
がたんがたんと重たい音でゆっくりと巨体が動き出す。見る間に速度を上げるそれに置いていかれるように、足を止めた男の前を車両の最後部が走り抜けていく。
首だけをめぐらせて、男は列車を見送る。



彼の探し人は乗っていなかった。
当然だ。
国中を飛び回っている彼に、そんな簡単に会えるはずもない。乗っていたら良いと、そう思っただけなのだから。
それでも、なぜか心に空虚な風が吹いていた。
期待などするからだ。
彼は自分を叱責し、自分を嘲笑する。
その愚かしさを恋と呼ぶのだと、彼の親友が生きていれば言っただろう。男は青い軍服を翻した。




「えーちょっと道をうかがいたいんですけどォ」
がしがしと特徴ある金色の頭をかき、少年が鼻にしわを寄せて、男の前に立ちふさがった。
「うっかり目的地じゃない所で降りちまって、今日の宿を探してるんだけど」
息が止まった。

「…あいにくとこの街には詳しくない」
「そっかー。じゃあ他をあたろっかな」
少年はがっかりした様子もみせず、くるりと背を向けようとする。
「あっ、私の泊まっているところでよければ…」
「――最初っからそう言えよ」
他に聞こえないようドスのきいた低い声が、男の次の言葉を封じた。




「おーい、アルー。今夜のタダ宿が見つかったぜー」
うってかわって明るい声で少年はぶんぶんと手を振る。見ればその先には、彼の弟の巨体があった。申し訳なさそうに、男に向かい小さくお辞儀をする。男は苦笑して小さく手を振り、この幸せな偶然は偶然なのかな。それとも君は私に気づいていたのかい、と隣の少年に小声でたずねた。


エドの答えは「知らねえよ///」だといい。んで、アルに「なんか突然今朝そわそわしだして帰るって言うんで慌てて飛び乗って、そしたらまた突然降りるとか言うからどうしようと思いましたよ」「大佐と連絡とってたんですね」とか暴露されると良い。
むすっとしてそっぽを向いているエド。
「ああ」とか言いながら、ロイは自分も今日突然の予定変更でこの町に視察に来たことなど言わない。ましてや旅の途中のエドがそれを知るはずもないことなど。
ただこの幸せににっこりと微笑むだけ。

ロイはエドにベタ惚れで、エドはまだこんなアホを好きになってしまっているらしい自分を受け入れられていない感じで(笑)。
だが確実に働いている恋の引力。


エドとアルのために大佐がもう一部屋取ってくれるんだけど、なぜかエドは大佐の部屋にいるんだろーなーとか。
「先に浴びたまえ」
「は?」
「シャワーだよ」
「何でオレが先…」
「君が後だとうっかり自制心がきかないかもしれないからだ!」
エドが大佐の湯上り姿に。

とかいうアホなことを考えてました。


「ありえね…」
「ふふん、この間のことを忘れたとは言わせないからな」
(…あったらしいです。そういう類の話が)
「あ、あれは」
「なんだ。何かいいわけでもできるとおもっているのか」
「あれはちょっと…ちょっと間違っただけでっ!」
額を押さえた手にそのままエドは顔をうずめる。
「…なんかさ…俺間違えたみた…い?」
「な、何がだ」
ついていけていない大佐。
「あやまっちゃったみたい…道を」
がばり。

とうとうエド、自覚?みたいな。


もういつもいつも夢見すぎです、私



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