空回り

2004/03/09

赤いコート。
右手に重そうな本を5,6冊抱え、さらに頭を埋めるようにして広げた1冊を読んでいる。
そんなふうにしては、気にしている背がますます低く見えるのに。
後ろを歩く自分に気づきもしない。集中しているのだろうが、その割にきっちりと障害物は避けて歩いている。少年の頭の中では、どういう処理がなされているのか。


思いがけないところで会う、と思いながらロイは声を掛けようとコホンと咳払いをした。
と、ほんの2メートル先を歩いている少年の頭がひょこんと上がる。
ほう?とロイは興味深く彼を見つめる。
きょろきょろと何かを探すように頭が動く。
横を向いた彼の口が、声を出さずに動くのが見えた。
限界、だ。
「――鋼の」
くるりと振り返った彼の顔がパアと明るくなる。
「大佐?」
さっきは声に出さなかった名前を、今度は確かに呼ぶ。
眉間にしわを寄せて本を読んでいる顔ばかり見ていた気がする。
こんな――年相応の晴れやかな笑顔は本当に久しぶりかもしれない。だが、これこそが彼の本質だ。太陽のような輝き――全てに光を与えるその姿こそ。
――今はこれが自分一人のために向けられていることが、素直に嬉しい。
「すごく会いたかったんだぜ、大佐」
その大きな金の瞳で見上げてくる彼に少し腰をかがめ、「私もだ」と言う。
これは――自惚れてもいいのだろうか?
ロイは思わず公道であることを忘れ、少年に顔を寄せた。



が。
「これにサインくれよ!」
「――は?」
お札のように額に押しつけられたのは、一枚の紙。肌触りとこの状況だけで何か想像がついてしまうほど、知り尽くした紙。
「大佐の閲覧許可がいるって言われちゃってさーこれ、ここ、ここ」
少年は今歩きながら読んでいた本をぱらぱらとめくって、一箇所を指し示す。
「ここんトコよくわかんなくってさ。そっちの文献に具体的な例と実際にどこまで実験的に確認取れてるのか載ってるっぽいことが書いてあってさ。だから、これ」
ちょいちょいと紙を振る。
あまりのことに呆けていると、ペンをむりやり握らされた。
「あ…ああ…」
条件反射的にサインしてしまう自分はなんと哀れなのだろう、とロイは思わず遠い目をする。
エドはサインのされた書類をロイの手からひったくる。空っぽになったロイの手の中には、ずしりと新たな重みが加わる。
「……」
「じゃあ、それ持ってついて来て」
持たされた本は5冊。専門書の類はとかく重くて大きくて肩が凝ると相場が決まっているが、これを今までずっと抱えてきたのか、とロイはあらためて機械鎧の偉大さを感じた。
ぼんやりと腕の中の本を見下ろしていたのをどう勘違いしたのか、2,3歩行きかけたエドが足取りも軽く戻ってくる。
「あれ、もしかして何か用あった?非番だって聞いてたんだけど。ああ、もしかしてデート?なら別にいいよ。俺一人で行くから」
別にやきもちを焼くふうでもなく、ごく普通の口調で、ロイにいったんは押しつけた本を取り上げようとする。ロイは内心がくりとしながらも笑顔で腕を引き上げる。
つられて背伸びする格好になった少年は、背の差に仏頂面する。
「何だよー」
「いいよ、付きあおう。図書館に戻るのだろう?」
「デートの約束があるなら、いいって言ってるのに!」
「まあ…デートの予定だったんだがね」
「ほら、やっぱり。その人待たせちゃ悪いだろ」
ぴょんぴょんと本を取り返そうと跳ねる少年はかわいかったが。
「別に待ってないみたいだから、いいんだ」
「はあ?振られたわけ?」
「いや、そういうわけでもないんだが」
いぶかしげにエドはロイを見上げるが、あまり追求しないことにしたらしく「ふうん?」と言って、ロイに並んで歩き出す。



まあ、これもデートと言えないことはないだろう。
行く先はともかく、相手に関しては当初の予定通りだ。
ロイは隣の少年を見下ろして、微笑んだ。




これは…たぶんロイエド だよね…(ブルブル)。
そんなつもりではなかったのだけど…!やる時はエドロイなのよ…(何を)。
大佐は最初っからエドに会いに行ったのです。だけど、偶然その途中で会っちゃって。
ついでに言うと、すでに肉体関係ありだと思いますよ。
だけどエドがこんなだから、大佐がっくりなわけで。

実はエドもイッパイイッパイだったら良い…(笑)。
素でコレなのも萌えるんですが。エドもフェミニストの気があるし。特に、母親を重ねてしまうような雰囲気の女性には。




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