黒白

最終決戦妄想

「すまん」
転がり落ちたのは言葉、そして涙。
対峙する相手は一瞬目を見開き、そして顔をそむけた。



上下の感覚すらない。落下しているのか上昇しているのか。闇でも光でもない薄暗闇の世界に足元に踏みしめる感触はなく、それなのに足下にはぼんやりと碁盤目模様の床が見える。それが足先より離れているように見えるのも、錯覚ではない。いや、この世界そのものが幻のようなものだ。
今、2人がこうしてある時点で、それはわかっていたこと。



「この瞬間に思い出すようになってたんだ?」
長い髪をどこからか吹く地獄の風になびかせ、王を自称していた彼は哄うように言った。
「くだらない。思い出す必要などなかったのに。そいつはお前の良心かい?」
「オイラはお前に……背負わせて」
「思い出す必要なんてなかったんだ。
何もかも忘れて、それで僕を倒してお前が王になればよかったんだ。そうなるはずだったんだ」
どこか気だるげに突き放す。



僕は音だけをまねた偽者。
麻倉葉王たる魂は僕のものじゃない。それは、葉、お前の方だ。
お前からその名を奪った偽者を倒し、王の一字を得て、お前は葉王となる。
それこそがシャーマンキングとなるのはハオだという占の真意。



「でもオイラにそんなことできない」
「それでこそ葉だという気もしないではないけれどね」
過度の憐憫は屈辱だよ。



涙をこぼす葉にハオは吐き捨てた。






麻倉茎子の体に辿りついた葉王の魂。
それを受け入れた僕。
その魂の形をまね、その記憶とSOFを含む力の全てを預かった。
葉王の魂は、無垢のまっさらに戻り、麻倉の嫡子として生まれ出でた。






都合の良すぎる成長をしてきたとは思わなかったのかい、お前は。
葉の力の封印は戦うたびに外れていった。全ては最初から葉自身の中に眠っていた力。
葉が力を目覚めさせるたびに、僕は僕自身の力の減退を隠すために、たくさんSOFに食わせる必要があった。
「僕がSOFに力を蓄えてもいくらかはお前の方に流れてしまっているし」
効率の悪い話だよ、本当。
肩をすくめる。



「そんな……それじゃあ全部オイラのために」
「お前が望んだことじゃないだろ。責任は全て僕にあり、だ」
だから、倒せよ。倒してみせろよ、僕を。



「何でそんな…」
「何でだって?それこそ、今さらだね」
理由が必要かな。お前がシャーマンキングとなることは何千年前から決まっていたことなんだよ。
世界は全てそのために動いていたんだ。
それなのに、お前が自分からそれを放棄しようとしたからいけないんだ。
僕はお前が自分の意志でシャーマンキングを目指すように仕向けた、ただそれだけだ。
「要は世界の意思、グレートスピリットの思し召しなんじゃない」



ハオは一歩踏み出す。
ぼんやりとした足元の光がそれにつられて動き、ハオは黒と白のマスの境目に立った。
「お前には借りがあるっていうのも理由になるのかな」
先に生まれた者は、どちらであろうと殺されるさだめ。葉王の力なくては、ハオは自衛手段もなくただ実の祖父と父に殺される運命にあった。
お前の力があったから、僕は生き延びることができた。
こうしなければ、僕は18年前に死んでいたんだよ。
愚かしい麻倉のせいで。



僕の麻倉への憎悪は本当だ。何もわからぬ子供を生まれ出でた瞬間に殺して是とする、その腐った有り様が憎い。
それは同時に、お前への憎悪でもある。
全ての根源である麻倉葉王、それでいて全て投げ捨てたお前。
それを受け入れたのは僕の方だけれど、今でもこの厄介な荷物を喜んでいると思われちゃたまらないね。
「僕はお前を憎んでいるよ、葉」
ああ、そんな驚いた顔をするのはやめてくれ。 僕の憎しみに、憎しみで応えるがいい。そうしてすっぱりと断ち切るんだ、全てを。



ハオはゆっくりと更に一歩を踏み出す。
更に一歩。そして更に。
その額に汗が光ったと思ったのは錯覚か。この世界の見せる幻か。
変わらぬ薄笑いが張りついたようにぴくりとも動かないのはむしろ、苦痛をこらえるためではあるまいか。





黒のマスへ。





白のマスに立つ葉の目の前に、真正面に歩みを進め。
手を伸ばす。
境界面に波紋が広がる。
反発に逆らい、伸ばした指先が境界面を突き抜ける。
はじけ飛んだのは、シャボンの表面のような濡れたプリズム光。
光を弾き、闇をまとって、その腕は葉の肩をつかむ。
葉に顔をしかめさせたほどの強い力。握りつぶすように肩をつかむ。






「僕を倒せ、葉!そして僕から王の一字を奪い返し、葉王となれ!
このお前の厭うた憎悪と陰謀の世界で、闇に君臨する王となるがいい!」






世界が暗転した。








「…あ……」
ぬるりとする感触。重く受け止めた体。彼の長い髪が、ゆっくりと肩に落ちた。
支えたいのに両手はうまっていて。
オイラが握っているのは何だ?
握りなれたそれ、は。
は る さ め 。








大地を揺るがす声無き絶叫は、肉体を離れいく魂に届いただろうか。


葉がハオ様を刺した一瞬の間のできごと。
葉こそが麻倉葉王。ハオは葉のために自分がハオだというふりをしていた。
そういうハナシ。
つか、全然話になってない…むしろネタレベルで。


つか、死にネタはやめようと思ってたのに…。
なんかマンキンもそろそろ佳境らしいので、どんな終わり方をするのかドキドキしながら、こんな予想を書いてたり。
タイトルは何となく「白黒つけるぜ、ゼブラァマン!」とか…言って、わかるのかしら。ゼブラ―マンで検索して御覧なさいまし。哀川翔…(笑)。




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