wanna be free

渡されたのは、イマイチ彼にはそぐわないもので。
「何なんよ、これ」
思わず、言ってしまう。
「何と言われても、困るけれど」
自分にそっくりの顔は、特に何のリアクションもなく。
「こんなもの、いらんだろ」
「いいじゃない。持っててよ」
「オイラは嫌なんよ」
「何でさ」
切り返された。

手の中のそれを見つめる。
「オイラの周り、誰も持ってないし」
「僕が持ってる」
ほら、と無造作にジーンズの後ろポケットから取り出したのは、色違いで。
要するに、お前とすぐ連絡がつくように、か。
「オイラ、機械とか苦手だし」
「ただの電話だよ。別に使いこなせって言ってるわけじゃないし」
「とにかく、オイラはいらないから」
「強情だなァ、葉は」
首の後ろに手を掛けられる。いつのまにか、身長差は広がっていくばかり。体格差も。
顔を寄せてくるのから、顔をそむける。
「……本当に強情」
ためいきまじりの悲しげな言葉。それでも、首を戻しはしない。そんな演技に騙されるほど、甘くはない。溺れてもいない。
まったく何を今更、だ。


「譲歩の余地はないの?」
「ない」
「……なんで?」
携帯電話を押しつけ返されて、上目遣いで見てくるのは、下心が露見しているのではないかと、思っているからだ。
あいにくと、お前の考えてることぐらいお見通しなんよ、こっちは。

でも、そうは言わず、冷たくあしらってオイラは宿舎に戻る。
後ろを振り返ったりしない。
あいつの反応はわかってる。オイラがわかってるのを知って、にっこり笑ってるんだ。
「よくできました」って。


……なんか、ムカツク。




「そういや、葉くんは携帯電話とか持たないの?」
まん太の問いに、あー…と言って頭をかく。
「あー…なんつーかな。携帯電話は良くないんだ」
「…?」
そんな説明じゃわかるわけないでしょ、お馬鹿。
と、アンナにはたかれてしまう。
「電波ってのは、あたしたちには危険なのよ」
うまく説明できない葉に代わって、アンナがまん太に説明する。
「電波が通じたら、その場は霊的にもつながってしまう。たとえ結界を張ってあったとしても」
「…どういうことか、よくわかんないんだけど」
「要するに、電話がつながってる状態なら、たとえどんなに離れていても攻撃できるってこと。霊的な干渉し放題」
人間も厄介なモノを作り出してくれるわ、とアンナはぼやいた。
あんたは知らないかと思ってたわ、そういうコトに疎そうだし。
そう言われて、オイラは笑う。
実はシルバについこの間教えてもらったなんて、言えない。最近、手口として増えてるとか何とか…何の手口なんよ、まったく。

たぶん、召喚に使うつもりだったんだろうな、と思って、オイラはふつふつと怒りが再燃するのを感じた。
今はまだ、「オイラの所にあいつが来る」んだから、追い返すこともできるけど、こっちが連れて行かれたら、逃げ出すのはかなりキツイ。
ホームグラウンドだからこその優位を失うわけにはいかんのよ!
オイラはひそかにぐっと拳を握りしめる。
   

その瞬間。
軽快な電子音。
「?」
「葉くん…」
「葉……」
何ともいえない表情をするまん太。どこからともなく取り出した1080をぎりと構えるアンナ。
あわてて探ったポケットの中には、いつの間にやらさっきの携帯電話。
「う…嘘だろ…いつ…」
「何やってんのよ、あんたはもう!」

ハオが、笑っているのが見えた気がした。
神さま、オイラはあなたを信じないけど、このどうしようもない兄貴をどこかにやってください。
真剣に祈りたかった。
   


「文字書きさんに100のお題」の51番目:携帯電話。
一応、葉アンでハオ葉。プラス シル葉…?
あー…携帯電話なら、もうちょっと別の話が書きたいカモ。
とりあえず、SSと言うにはお粗末なのでこっちに。




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送