ロ ス ト

(設定
戦闘兵器リゼルグ・ダイゼル。それをいろいろな手違いの結果、助けてしまった逃亡兵ホロ。
只今、戦闘後さらに逃亡中。使われていない古い地下通路内)



動けない、とどこか端然と、そう言う。
暗がりで今の今まで気がつかなかった、足元に広がる黒いしみに、俺は慌てる。
「おい。お前…血が……!」
「違う。漏れてるのは、オイル――運動機能を維持できないほどオイルが流出してる」
どこを見ているのやら、その神秘的な緑の瞳はわずかに発光している。
何かの光を反射しているようにも見えるが、そうではない。なんとかいう帯光粒子がどうとか。俺にわかるわけもない。
「と、止めねェと!」
「でも、もうオイルの循環システムも壊れてるから、流出を止めてもあまり意味はないと思う。
それに、そろそろ左足の神経線維が焼き切れる。ちょっと無茶しすぎたかな」
「じゃあ…俺はどうすればいいんだよ!!」
きょとんとした目で鋼鉄の羽根を生やした少年は、こちらを見る。


「――難しいね」
彼は、そう言う。
「あァ?何がだよ!」
流れて落ちる黒い油を止めようと、必死にその傷口を布で押さえる俺の頭に、そっと手を伸ばして
「人間を理解するのは、本当に難しいね」
「何、言ってんだよ。お前!」
痛覚の存在しない――怪我した時点で痛覚をキャンセルしたと言っていた――天使は、穏やかに微笑む。こいつにとっては、一瞬ののちに死ぬ…壊れることも、恐れることではないのか。
だが、俺は恐れる。
自分の死だけでなく――。
「僕のために何かしてくれると言うのなら――」
生身としか思えない腕が、優しく俺の首に巻きついた。体重を預けられ、背後の壁へと押しつけられる。
「抱いててよ、このまま」
どうせ、もう少しだけだから。


ごとり、と肩からちぎれた左腕が、地面に落ちた。
コードを引きずって左の鎖骨までいきそうになるのを、押さえた。
「このまま……」
緑の瞳は、いつまでも光を失うことはなかった。そこに意思がなくなろうとも。
     


「文字書きさんに100のお題」の77番目:欠けた左手
無駄にSSばかりですみません。
しかもリゼ死亡です(汗)。ホロはリゼの瞳だけいつまでも大事に持ってたりします。ウワワ。ホロリゼなんて初めてだよ、オイ。




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