だからと言って、それは、戦わなかった事の言い訳にはならない。
……戦えなかった事の言い訳には。
ホロホロは目を閉じた。
自分でもくだらないことを考えているとわかっている。
だが、自分の中に生まれたこの茫漠とした不安が消えるわけではない。
――不安?
俺は何に不安を感じているんだ。
今日の試合は内容自体は悪くなかった。
結果としても、ハオの手下相手に、一勝を上げたことは紛れもない事実で、
ファイトに出てる他の連中に多少のプレッシャーを与えることができた。
これで、対戦相手がビビって棄権とかしてくれたら楽なんだが。
チョコラブも実戦でもちゃんと使える奴だというコトがわかったし、
得たものはあった。
俺が戦わなかったことを除けば。
――自分が出なかったのは、リーダーである蓮が出るな、と言ったからだし、
蓮の判断は正しい。
初戦から全員の能力を晒す必要などどこにもない。
あくまで戦略的判断だ。
蓮はチョコラブに行けと言った。俺は次の試合で戦えばいい。
それなのに、それを言い訳だと感じるのは、 どうしても庇われている気がしてしまうから。
俺は庇われている。蓮とチョコラブに。
ホロホロは、蓮の寝顔を見つめ、瞳を曇らせた。
今日は酷く抱いてしまった。
痛みには声一つ上げずに耐えぬく蓮だから、目尻に残った涙の痕は、快楽によるものだと思うが、
……思いたいが、それでも酷かった事には変わりない。
何で、蓮はこんな俺を受け入れているのだろう。
抱くのは俺のほうなのに、抱いた後でこんなにも守られている気がするのは何故なのだろう。
実際に守られているんだよ、オマエは。
声に出さずに、自嘲する。
何でなのかもわかってる。
……俺は人を殺したことがないから。
何も思わずに人を殺した過去があって、
それを後悔する二人は共に、俺の手を汚すことはさせまいとする。
それが……そういう気づかいが嫌なんだよ、俺は。
こんな閉塞感。
それが嫌だというただそれだけの理由で、俺は人を殺せそうだ。
そしたら、その時、おまえたちはどうする?
だが、そんな問いは明らかに仮定でしかなく。
「俺に人は殺せない、か」
そんな事実を自分に再確認させるだけだ。
あの女――平気で人を殺しやがった。
作り物めいた顔で微笑みながら首を落とした。
ボリスの時同様、情け容赦のない戦い。いや、あれを戦いとは呼べない。
あのジャンヌという女は、殺さずに勝つことも出来たはずだ。
それなのに、殺した。
俺たちはいつからこんな戦いをするようになってしまったのだろう。
俺たちが目指していたのは、それぞれの理想を実現するべく、
シャーマンキングになることで、
それは決して、他のシャーマンを殺していくことではなかったはずだ。
俺たちの戦いはいつからこんなに歪んでしまったのだろう。
これがシャ−マンファイトなのか。
この戦いにこんなにも嫌悪を覚え、 決して奴らのやり方を正しいと思うことも、 蓮のように、奴らは奴らと割り切る事すら出来ない俺には、人など殺せない。
それでは、いつか、守りきれなくなる。
だから俺は恐いんだ。
こんな甘い俺では、いつかお前を守りきれなくなってしまうのではないかと。
蓮、お前を。
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