BIRTH

はじまりは16年前。




懐かしい麻倉の血の匂いに惹かれて、入り込んだ女の胎。
そこに宿った小さな命の息吹を、我が物として我が肉体として、奪ってしまえば良かった。
いや、実際にそうしようとしたのだ。
かつて愛しんだ者に刃を向けられ、絶望した自分はただ、自分を拒んだ世界への復讐のために、 肉体を必要としていたのだから……。




だが、――まだ形すら成さない小さな小さな命は、 自分の宿るべき肉体に入り込んだ異物に、 その細い精神の腕を伸ばしてくる。
たとえ目覚めていなくとも、麻倉の血ゆえか。
僕はその精神に驚嘆しながらも、この未来王に刃向かう愚かな麻倉の末裔を 欠片すら残さずひねり潰すべく、その攻撃を待った。
だが、大した攻撃もできまいと、するがままにさせたそれは、 言葉にならぬ言葉を溢れさせる。
波のような豊かな感情。懐かしい波動。心地よい響き。
(悲しいのなら……抱いてあげる)
(優しくやさしく……抱いてあげるから)
(だから……)
あいつはあの時そう呟いて、僕を包もうとした。
振り払おうとする僕の手をくるみこみ、抱きしめ、覆いつくす。
そうして僕は、いつしか抵抗をやめた。
それが……あまりにも気持ち良くて。






その温もりを失いたくなくて、僕はあいつを消さなかった。消せなかった。 失うことなど考えられなかった。この温かさを。
この世に生れ落ちることすら厭いたくなるほど、それは甘美なひとときだった。
だが、この稀有の魂をこの世に送り出さないことも何だか悔しくて、もったいなくて、 それは掌中の玉を人に見せびらかしたい気分と同じで、 愚かしいと自分を笑う。


出遭った最初の瞬間に、僕は誰にも止められないほどに、この魂に魅かれてしまっていたんだ。






体内の十月十日のことは、生まれ落ちた時に忘れてしまうこと。
それを知りながら、いや、知っていたからこそ、僕はあいつにいろんな話をした。
僕の戦い、僕の愛した物、僕の……僕の全てを。
吐き出すように様々なものをあいつに伝えた後は、温もりに包まれて まどろむのが常だった。


すごく平和なひととき。
僕の長い長い放浪の中でもわずかな、戦いのない日々。






そして十月十日ののちに、僕は僕の半身に別れを告げた。
会わなくてすめばいいのにね、と。
僕の最後の言葉はそれだった。
生まれ落ちた瞬間から、僕を産む母すらも敵であることを知っていて、 僕は戦いに備え、気を引き締める。
今この時、半身に別れを告げたその瞬間から、僕の戦いは再び始まるのだ。
だが、その決意も何もかも、あいつは知らないふうに。


(それでも会いたい)


そう、言った。




(それでも会いたい)
(会って、抱きしめたい)
(きっと、お前は泣いているから)


その言霊が自分を縛るのを感じながら、 激しく押し寄せる言葉の波に背中を押されるように、 僕はこの世界にみたび生まれ出でた……。






「何笑ってるんよ、ハオ」
「ふふ、笑ってないよ」
「笑ってるじゃねえか、嘘つき」
葉は少しむくれて、僕に回した腕に力を込める。あの蜜月のような十月十日を憶えていないお前は、 再び僕と出会い、そして――かわらず、僕を抱きしめたがる。






僕を包んで。
僕を受け止めて。
僕を抱きしめて――。




ハオ様にとって、母親の温もりとは、むしろ葉だってコトで(笑)。 十月十日、ハオ様は葉に抱かれていたのですね…フフ。
は…何だか葉×ハオっぽいけど、違いますからね!! れっきとしたハオ葉ですヨ。
うちの葉きゅんは強気ヒメだから! 精神的にはリバな部分もかーなーり……。ハオ様ダメダメじゃん…。


テスト前日夜9時に一時間で書き上げたブツ。
書き上げた私は、斬鉄剣を鞘に収める五ェ門のごとく、
「また睡眠時間を1時間縮めてしまった……」と呟いたとか何とか…。
(――あ?こりゃスクライドのク−ガーか)




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